LIVIN' IN PARIS

CT-01 #2

date: 2017.10.06 category: ANONYMOUS author:

本日はコートのディテールなどを・・・

今回のコートはデザイナーの方とデザインを決め(実際はほぼお任せですが)、その後に実際に型紙から縫製までを担当する職人の方とも打ち合わせを重ねました。

そこで細かいディテールを詰めていったので、写真多めでご紹介します。

まず、フロントボタンは比翼になっていまして、このあたりはスタンダードなバルマカーン(ステンカラー)コートに倣っています。

フロントボタンの付け方は少し甘めというか、あまりガッチリ縫い合わせていないので、ちょっと頼りない感じも最初はしたのですがこれは職人さんによると、負荷がかかったとき(ひっかけた時など)にボタンをガッチリ付けていると生地が裂ける事があるので、ボタンが先に取れるように少し甘めにしているという考え方のようです。

この話を聞いて思い出したのが、バイクのヘルメットは大きな衝撃があった時に頭部を守る為に割れるようにできているという話でした。

力が加わった時に、その力の逃げ道をどこに設定するか、という考えだと思います。

破れた生地を直すのは難しいですが、ボタンを付け直すのはそんなに難しい事ではありません。

僕が10代の頃に働いていた洋服屋の店長が教えてくれた「自分でボタンを付け替えて(付け直して)からが本当の自分の洋服になるんだよ」という言葉は今も強く印象に残っています。

ボタンの裏側に付いている力ボタンもまた生地の保護の為ですね。

ただ、見た目にも格好良くて好きなのです、この革のボタン。

 

そして、フロントポケットは口が閉じられるようにしたかったのですが、フラップの表側にボタンホールが出ないように、かつボタンの着脱はしやすいように仕様を考えました。

 

表の生地の厚さに負けないように、裏地もしっかりとしたコットンをチョイスしています。

僕からの注文は「内ポケットの充実」でしたが、想像以上に魅力的なポケット使いで仕上げて頂きました。

左右に大きめのポケット(一方はiPadもケースごと余裕で入ります)を配置し、その上部にも縦に切ったポケットを用意しました。

写真だと分かりにくいですが、大きめのポケットの横にも同様のポケットを配置しています。

ポケット口の補強はハンドによる丁寧な仕事ぶり。

これも最初はカンヌキ(デニムなどで使われている補強の方法)の方が良いのかな?という質問をしたところ、上で述べたボタンと同じ理由でこのようなハンドステッチになっています。

 

そして表地と裏地の間の見えない部分なのですが、袖口と裾にはコットンの芯を手まつりで止めています。

「芯」というのは洋服を作る時に、その部分に厚みやハリを持たせる為の素材で、例えばシャツだと襟や前立てやカフスに使われるので何となくイメージできるかと思います。

現在では「接着芯」と呼ばれる芯が一般的で、これはその名の通り糊(接着剤)が付いているのでアイロンで熱を加えることによって接着できるので、洋服の生産効率的には非常に優れています。

ただ、この接着芯は経年変化により糊が剥離してきてしまい、一度剥がれた芯をもう一度くっつける事はできません。

例えば表地が洗濯により縮んだ時に、変なシワが付いて取れなくなったりなどの経験はありませんか?

それを回避するため、今回のCT-01では昔ながらの方法で手間はかかりますが、糊ではなくステッチで丁寧に縫い付けていくという方法を取りました。

これは上記のボタンと同じで、直しながら長く着て頂きたいという僕たちの気持ちから選択したディテールなのですが、見た目にも表地と裏地の間に空間ができる事で、膨らみのある裾のラインを実現できています。

芯の事は言わなければ分からない点ですが、「何となく雰囲気いいコートだな」と思う(思われる)のにはこういったディテールの積み重ねが大変重要だと考えています。

色々と蘊蓄を書いてしまいましたが、全ては見た目の格好良さの為だと考えて気楽に捉えて頂いて構いません。

服は着て格好良いのがやはり一番ですから。

The most important thing of clothes is to look nice when you put them on.

とは言え、自分だけが知っているこだわりを着るというのもまた、楽しい服との付き合い方かもしれません。

On the other hand, it might be a fun way to wear clothes which only you know their preferences deeply. 

 

現在発売中の19xxは日曜までの販売です。

その後は購入することができなくなりますので、もしも気になっている方がいらっしゃいましたら、是非ご検討ください。

それでは皆様、良い週末をお過ごし下さい。

Have a good weekend.

Seki

 

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PROFILE

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関 隼平 / JUMPEI SEKI


FASHION IMPROVER

1979年東京生まれ。2008年に1LDKの立ち上げに参加し、全店舗のバイイング、マネージメントを行う。2015年からはパリ店勤務となり2016年に独立。Fashion Improverとして様々なショップ、ブランドの価値を高める仕事をパリにてスタートさせる。
instagram.com/sekijumpei/
sekijumpei@gmail.com

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岡本 真実 / MAMI OKAMOTO


EDITER / WRITER

東京生まれ。大学卒業後、いくつかのメンズ、レディスファッション誌のエディターを経て、2015年6月よりパリ在住。現在、フリーランスの編集者として活動中。
mamio.kamot@gmail.com

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