HOUYHNHNMの連載でインタビュー中にRobinが教えてくれた、日本の伝統パッケージを紹介している「HOW TO WRAP FIVE EGGS」という本。
彼が言っているのは1965年にアートディレクターの岡 秀行が書いた「日本の伝統パッケージ」の翻訳版です。
インタビュー中でも答えている通り、全く知らない本でしたので絶対買おうと調べてみると英語版もあったのですが、せっかくなら日本語で読める方が良いなと探してみてこちらを見つけました。
洋書の方が飾っておくには格好良いですが、内容を理解するには日本語の方が何かと便利なのと、おそらく洋書の方は白黒なのでこちらのカラー版の方が魅力が伝わってくるかなと思いました。
デザインに興味がある方からしたら基本の一冊なのかもしれませんが、とにかく内容が素晴らしいです。
「包むことはそのまま生きることである」と作者が書いているように、人間の生活に欠かすことのできないパッケージを様々な素材(木や竹、藁など)ごとに紹介しています。
章ごとの序文にはなぜその素材を使っているのかなどの簡単な説明はあるものの、一つ一つの包装については細かく触れていないので、それがまた想像力を掻き立ててくれます。
自然のものを活かしたパッケージは日本人独特の自然観が影響しているという考え方も興味深いです。
それにしても、この本の序文は1972年のものを再録したとありますが、50年後の今読んでも共感する点が多いです。
科学技術の発展による文明の行き詰まりや、大きくなる広告産業、人間性の回復や生きがい。
本質をついた文章は色褪せないのか、それとも50年前から人間は進歩せず同じ問題で悩んでいるのか・・・
自然にあるものをうまく使っているとはいえこの本に出てくるパッケージは、ビジネス用に使われる「エコ」や「サスティナブル」という言葉とはすごくかけ離れたところにある事は間違いないです。
もっと根源的な日本人の持つ美意識や感覚を知ることのできる本だと思います。
日本人の持つ美意識とは、という疑問に英訳版でジョージネルソンが書いている一節が答えています。
「このようなものを何故彼らは作ったのか?端的にいって彼らはそうせずにはいられなかったのだ。何故なら彼らには、ものの重要性の違いなど初めからあり得ず、私たち現代人には根本的には違うとしか思えない王宮と酒瓶ですら、彼らにとっては本質的に同じ価値あるものであるから。何故なら人間の手で作られるものの存在自体が、正当な形と、何にもまして正当な美を要求していたから。何故なら人間が作り出すものは、大いなる自然が創り出したものとまったく同じように作られるべきであり、創造の神が美しからざるものを作り得ないように完璧な人間もまた、美の理念に反するものを(それが何であれ)一切許し得ないはずであったからだ。いいかえれば価値観そのものが彼らを動かしたのであり、寺院の庭も、婦人の髪飾りも、宮殿も、十尾の干しえびのパッケージも、およそ存在するものは、彼らにとって等しく大切な価値を持っていたからに他ならない・・・」
これは外から見たからこそ分かる、日本人の価値観なのではないでしょうか。
作者はビニールやプラスチック類がよくないというのではなくて、全体の調和をもっと考える必要があるとも書いています。
そして僕にとっては最も響いた言葉。
「結局、安直な姿勢では心をうつような優れたものはできない。それははっきりいえるだろう。」
これを実践するのは簡単ではないですが、もっと日々意識していこうと思いました。
今日は夏休みの宿題には少し早すぎる読書感想文を書いた気分です。
Seki